ゴールまで伴走するメンタリングで、プロダクトも考え方もブラッシュアップ
ホシュー株式会社 取締役 高木一郎 氏
TEPメンター 重松崇志 氏

参加企業 | ホシュー株式会社 |
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事業概要 | フィールドエンジニアの業務負荷を軽減するアプリを提供しています。AR技術を活用したビデオ通話により、遠隔から齟齬のない指示出しができます。また通話の自動記録や文字起こし機能により煩わしいレポート作成にも役立てられます。 |
プログラムで得た実績 |
プログラム参加後(または参加期間中)に得た実績 ・伴走支援型の考え方を応用し、社内コミュニケーションの促進 ・プレゼン時のペルソナ設定を応用し、相手に合わせて柔軟に対応する営業スタイルの獲得 ・11件の新規営業開拓 |
柏の葉の新産業創造を牽引するスタートアップ支援「KOIL STARTUP PROGRAM 2023」では、約5か月間にわたってスタートアップの事業成長を後押ししてきました。
今回は、情報共有・チーム間連携に役立つツールの開発を通じてフィールドエンジニアの業務負荷軽減に貢献する「ホシュー株式会社」取締役の高木一郎氏にインタビュー。TEPメンター重松崇志氏によるメンタリングの感想、全プログラムを終えて感じること、そして今後の展望を伺いました。
ホシュー株式会社 取締役 高木一郎 氏
長年、物流システムの設計・開発に従事。その後、九州のスタートアップで子会社設立などを経てロボットを活用した物流自動化のスタートアップに転職し、商品企画・システム設計に従事。その中で現場が見えないことによる移動時間やミスコミュニケーションによる時間消費が課題と感じ、2022年12月にホシュー株式会社を設立。
TEPメンター 重松崇志 氏
フリーランス 経営コンサルタント
金融機関での営業、総合コンサルティングファームで経営コンサルティング、M&Aアドバイザリーの経験を経て、現在はフリーコンサルタントとして活動。経営コンサルタント、コーチング、スタートアップメンター、研修・トレーニング講師。複雑化する経営課題に対して、一般論に閉じず、経営者に寄り添う共創型を信念として掲げ、伴走支援を通してアウトプットとプロセスにコミットするスタイルで支援を実施。
プレゼンではなく、実績づくりをプログラムのゴールに設定

── メンタリング開始時、お互いの第一印象はいかがでしたか?
ホシュー株式会社 取締役 高木一郎(以下「高木」):ロジカルにコミュニケーションをしてくださる方だなと思いましたね。私が話したことをホワイトボードに図解して、整理してくださいました。
TEPメンター 重松崇志(以下「重松」):高木さんのお話を聞いていて、やりたいことは理解できたのですが、わかりづらい部分も多々ありました。どれが目先のことで、どれが中長期的なことなのか。ARを活用して可視化を行いたいのか、コミュニケーションの質を向上させたいのか。ツールを販売したいのか、プラットフォームを構築したいのか。その辺りの理解ができなかったので、ホワイトボードで整理していきました。
高木:ちょうど過渡期だったこともあって、自分自身でも整理できていなかったんです。構想はあるけれど「これだけの機能だと競合に負けてしまうのではないか」「どのような機能を、いつ追加すべきなのか」など悩んでいる部分も多くて。重松さんはこちらの話をしっかりと聞いた上で、論理的に意見をくださる方で助かりました。
── メンタリングを通して、主にどのような課題に取り組みましたか?
重松:「1件でもいいので実績を作る」という目標は最初から設定していました。というのも、最終的なアウトプットをプレゼンで終わらせるのはもったいないと思っていたからです。
高木:そうですね。私も「事業をスケールさせること」に注力したいと考えていました。重松さんはプレゼンの先を見てくれている感じがして、同じ方向を向いて頑張れそうだなと思いましたね。
重松:実績を作るためにも「作り込み過ぎず、まずはお客様のところに行きましょう」ということも伝えていました。新規事業に取り組むと、営業に行くまでに時間をかけ過ぎてしまうケースは非常に多いんです。
そのため「お客様に見せて、フィードバックをもらって、改善して、また見せにいく」というサイクルをできるだけ早く回すことを意識してもらいたいと考えていました。
── いかに早く、お客様のところに持っていくかを大事にされていたんですね。
高木:ただ、ツールがまだ完成しておらず、構想だけがある状態でお客様のところへ営業に行くことはなかなか難しいと感じていました。ツールの特性上、機能を文書や言葉だけで説明しても半信半疑のような感じになりやすく、現物を見せる必要があるだろうなと。
だから「ARで電話できます」ぐらいのα版を開発して、お客様へ見せに行きました。反応は悪くなかったのですが、やはり競合に負けてしまうだろうなという課題が残って。
市場分析をしてみてもコモディティ化が進み、値下げ合戦になっていく想像しかできず、このままだとスケールは難しいなという結論にたどりつきました。
重松:α版はAR機能だけだったので、シンプルで、わかりやすいとは思っていました。ただし、高木さんはそちらに流れずに、独自の発想でビジネスの価値を生み出そうという意志を持ち続けていた。
だから最終的に、「物理的な距離の差を減らしてくれるAR機能」「話している内容をテキスト化してくれる機能」「話したことを要約して整理してくれる機能」の主に3つの機能を掛け合わせるというところに行きつきましたよね。
高木:そうですね。潮目が変わったのは、10月の中間報告が終わった後でした。ツールのβ版を開発して、営業もどんどん行えるようになっていきました。
重松:確かに、中間報告後の動きはターニングポイントでしたね。お客様のもとに営業しに行ったことで、いろいろ気づきもあって「もっとこうしたらどうか」と議論もできましたよね。
プレゼンも営業も、ネクストアクションを意識して動けるように

── 顧客の声も聞きながらプロダクトのブラッシュアップができたんですね。
高木:そうですね。10月末ごろにβ版を作り上げることができて、知り合いの企業6社にβ版の協力をお願いし、他5社にも営業に行けたんです。お客さん側からもいろいろなアイディアが出てきて、とても参考になりました。
重松:高木さんとは隔週でディスカッションしていたのですが、毎回あっと驚くようなアップデートがありました。そして、徐々に「営業パーソン」になっていっているなと思いました。
高木:営業の回数を重ねていくうちに、人を見てから何を説明するかを決めた方がいいと思えるようになったんですよ。相手のレイヤーによって、話す内容を変えていくべきだなと。
重松:現場に近いところで働いている人は「自分の業務を楽にしたい」と思われる人が多いし、マネジメント層になると「会社の業務改革をしたい」と思われる人が多い。提案する人の立場によって求めている視点が違うので、見極めは大切ですよね。
高木:現場に近いところで働いている人相手には「AR機能で可視化できますよ」「会議で話した内容を自動でテキスト化できますよ」といった主に機能の話をして、マネジメント層相手には「DX化が進みますよ」「省人化につながりますよ」といった主に価値の話をしていました。
重松:自分の体感を持ってこのような話ができているのが、高木さんが5ヶ月で一番成長したところなのかなと思います。
── 高木さんはご自身ではどこが成長できたなと思われていますか?
高木:これまでインバウンド営業の経験はあったのですが、アウトバウンド営業の経験はなかったんです。アウトバウンド営業の場合は、相手のことをよく知らないと提案できないですよね。
今回のプログラムを通して、事前にどのような会社で、どのような部署の、どのような役職の方が対応してくださるのかを徹底的にリサーチしてから営業に臨むようになりました。そこも営業スキルで磨けた部分かなと思っています。
重松:私はプレゼンのときに「誰が参加していて、どういうことを伝えて、次にどう活かすのかを考えましょう」ということを毎回伝えていました。それを営業にも落とし込んでいたのは、すごいなと感心しました。
高木:資料作りも、プレゼンも、営業も、誰に見てもらうもので、どういう情報の伝え方をして、どういう感情を抱いてもらい、どのようなアクションにつなげたいのかをよく考えるようになりましたね。
重松:高木さんはベーススキルがとても高いです。コミュニケーション能力も、プレゼン能力も、スライドの作成能力も高い。だからちょっとした考え方を伝えるだけで、大きく変化したなと思います。
同じゴールに向かって伴走してくれたメンター

── 今回メンタリングを受ける中で、一番印象に残っていることは何ですか?
高木:プライベートでトラブルがあって、こちらのプログラムとのバランスが取りづらくなっていた時期があったんです。そのときに重松さんが伴走支援型のコンサルティングをしているという話をしていて、それが強く印象に残っています。
重松:コンサルティングに限らずですが、いかにお客様に寄り添って、同じ目標を目指して課題解決していけるかがとても大事だなと思っていて。「問題意識を一緒に解決していきましょう」というビジネスパートナーのようなスタンスが大事だ、という話はしましたね。
高木:この話を聞いてから相手の立場に寄り添って、コミュニケーションを取るようになりました。「我々の会社はここを目指しているよね。だから今こういうことをしているよね」といったところの認識合わせを行い、トラブルの解決に向けて一緒に取り組んでいけるようにしました。
── 重松さんが高木さんにしていたメンタリングも、まさに伴走支援だったのではないかなと思います。
重松:そうですね。「私が伝えることを受け入れるか受け入れないかの判断は自分でしてください」という話を高木さんにしていました。スタートアップは「これまでにない価値を世の中に生み出そうとしている企業」ですから、答えがない状態で、事業を行なっていかなければいけません。そのため、「こうやるべきだ」とは決して言わずに、考え方だけを伝えるようにしていました。
高木:スタートアップが新規事業を作ることの難易度をきちんと理解した上でアドバイスをしてくれているのだと感じました。正解がないところに対して、「ビジネス的にどうあるべきか」「どうすると失敗しやすいのか」などの考え方をアドバイスいただいてたのかなと。そういったアドバイスを、私は受け入れるというよりも、受け止めて一度考えるようにしていたと思います。
重松:伝えたことを全て受け入れられても困るなとは思っていたんですよね。高木さんに比べたら、私がホシューや業界について知っていることはかなり少ないので。もちろん情報格差をできるだけ埋めようと、コミュニケーションの量と質はかなり意識しました。ただ情報格差が完全になくなることはないので、捉えきれない部分は出てきてしまうなと。
高木:そうですよね。だから私も最終的な判断は自分がする、責任を持つという意識は常に持っていました。いろいろとご意見をもらった上で、我々のリソース、キャッシュなどを加味して、優先順位を決めていきました。
「もっと社会をよくしていこう」というエネルギーが充電された半年間
── 次回のプログラムに期待することはありますか?
高木:スタートアップが困るところは大体、ヒト・モノ・カネですよね。個人的には、ヒトが後々ボトルネックになるだろうなと思っています。そのため採用支援も行っていただけたらありがたかったです。
もしくは今回のプログラムのようなハンズオンでヒト・モノ・カネの支援を行ってもらえるような機会があれば助かるだろうなと。
重松:そうですね。そういった継続的なフォローがあると良さそうですよね。
── 最後に、今後の事業の展望を教えてください。
高木:今回のプログラムに参加させていただき、悩んでるのは自分だけではないなという気づきが得られました。これまで2年ぐらいは、1人で考えて1人で壁打ちして、孤独の中で戦っていたんです。
でも、今回のプログラムで他の参加者さんが「何か新しいものを生み出そう。もっと社会をよくしていこう」と奮闘されている姿を間近で見て、良い刺激をもらえました。エネルギーが充電された感じです。
そのエネルギーを使って、半年では達成できなかった実績をまず作りたいです。実績ができた暁には、柏市と連携して、実際に使っていただく機会を作ったり、ニーズのある企業をご紹介いただいたりできればなと思っています。
KOIL STARTUP PROGRAMについて
「KOIL STARTUP PROGRAM」は、柏の葉スマートシティにあるイノベーション拠点KOILにおいて、2022年より始動したスタートアップ支援プログラムです。 新産業創造を牽引するスタートアップの成長支援を目的に、KOILの無料利用、ビジネスプラン作成セミナーや個別メンタリングをパッケージ化したプログラムを用意しています。本プログラムを立ち上げることで、柏の葉スマートシティにおけるスタートアップの集積と事業成長、さらにはスタートアップ・コミュニティの醸成を促進し、柏の葉スマートシティにおける新産業創造をより一層加速していきます。
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