事業の「当たり前」を磨き上げるメンタリングで、チームまるごと成長できた

参加企業 | 株式会社emome |
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事業概要 | 介護施設で利用者が介護以外のエンタメ等付加価値を享受できる環境を構築する。目下では、映像活用レクリエーション事業「シニアカレッジ」を全国の施設に導入中。また、他社と協業し、高齢者向け商材の開発を行い、高齢者に新たな価値を届けている。 |
プログラムで得た実績 |
・会社としてのアイデンティティが定まり、大事にすべきことが見えた ・経営者として会社全体に資する行動ができるようになった ・現場で事業をリードするメンバーが育ち、チームビルディングが促進された |
柏の葉の新産業創造を牽引するスタートアップ支援「KOIL STARTUP PROGRAM 2024」では、約4か月間にわたってスタートアップの事業成長を後押ししてきました。
今回は、超高齢化社会のインフラを築き、日本の介護モデルを世界スタンダードにすることを目指す「株式会社emome」代表取締役の森山穂貴氏に、TEPメンター 山岸朝典氏によるメンタリングの感想、全プログラムを終えて感じること、今後の展望を伺いました。
株式会社emome 代表取締役 森山穂貴 氏
東京大学社会心理学研究室在籍。LINE株式会社(現:LINEヤフー株式会社)にて、プロダクトマネジメントに従事し、トークタブ上部コンテンツの企画・実装に携わる。高校時代からのミッションである「エフィカシーに溢れる世界を創る」を達成するため、2023年に株式会社emomeを創立、代表取締役就任。
TEPメンター 山岸朝典 氏
池森ベンチャーサポート合同会社(ivs) 事業統括責任者/公認会計士
監査法人、事業会社の経営企画などを経て、Fancl創業者である池森賢二氏が2018年11月に立ち上げたivsに創業時から参画。“社会起業家に光をあてたい”という同氏の思いを実装すべくハンズオンで起業家支援に取り組んでいる
学生起業家ならではのチームビルディングの課題

── メンタリング開始時、お互いの第一印象はいかがでしたか?
株式会社emome 代表取締役 森山穂貴(以下「森山」):最初にお会いしたとき「とても軽やかで、相談しやすそうな人だな」と感じ、実際にメンタリングが始まって、第一印象が間違っていなかったことを確信しました。
TEPメンター 山岸朝典(以下「山岸」):第一印象は「若いな!」でしたね。いま22歳の若さで、学生起業家として課題感を持ってビジネスに取り組み、事業を軌道に乗せられているのはすごいと思いました。自分がその年齢だった頃を振り返ると、申し訳なくなるほどでした。
── 約4か月間のメンタリングで、参加当時の課題を解決できましたか?
森山:弊社の場合、KSPに参加した時点ですでにビジネスが走り始めていました。したがって、相談しながら新たなビジネスプランを作成するというより、山岸さんによる個別メンタリングを中心に、事業への取り組み方をブラッシュアップしていく4か月でした。
メンタリング期間中は、週1回、オンラインで僕の悩みを聞いてもらっていました。弊社の経営企画メンバーである寺井も同席したのですが、山岸さんとの会話は、僕だけでなく寺井自身のマインドセットにおいても価値あるものだったと感じています。
山岸:オンラインミーティングでは、寺井さんに聞かせるように僕と森山さんが話すこともありましたし、森山さんが寺井さんに対する想いを伝える際に「それについてどう思う?」といった質問を投げかけて、寺井さんの気づきが醸成されるように働きかけることもありました。
── 課題解決のポイントと、どのように解決したのか教えてください。
山岸:森山さんのビジネスに対する想いは一貫しており、現実的にうまく回っているので、経営の方向転換をする必要はありません。そのため、メンタリングではチームづくりの部分にフォーカスすべきだと感じました。総じて、チームビルディングの考え方を伝え、その整理をしてきた4か月間だったと思います。
これは森山さんに限った話ではありませんが、学生のうちは価値観の合う人だけで構成されるコミュニティに属していることが多いと思うんです。しかし、社会に出ると、いろいろな価値観を持つ人たちとうまくやっていかなくてはなりません。
森山さんがビジネスに対する想いをそのまま言葉にしても、相手によってはうまく伝わらないこともあるでしょう。そんなとき、彼のやりたいことを、相手が理解しやすい言葉に翻訳してくれる人が社内にいたら、いいチームになるんじゃないかと思いました。
森山:昨今、カジュアルに起業する学生が増えすぎたことで、「学生起業家」という肩書がネガティブに見られるようになった印象があります。僕自身も現役大学生なので、その事実が採用をより難しくしてしまっている気がしていました。
山岸さんのおっしゃるように、僕の言葉を翻訳してくれる立場の方が社内にいたら、弊社の成長スピードは大きく変わるでしょう。そんな考えから、つい先日、実力のあるシニアの方を1人採用しました。
採用面以外では、「自分が何をしたいのか」「自分たちは何の会社なのか」を改めて考えることができ、その答えがなんとなく見えてきたと感じています。
当たり前のことを着実に積み重ねていけばいい

── 今回のメンタリングで印象に残っているアドバイスがあれば教えてください。
森山:メンタリングというよりコーチングに近くて、「誰にどうやって任せるか」というテーマでよく話をしました。そこで学んだ山岸さんの「人に任せる」論をベースに、僕の働き方はずいぶん変わったと思います。
それまでは何事も自分が主導しなくてはと考えて、カレンダーに予定をぎっしり詰めこんでいたんです。常にオフィスにいられないことにも、不安を感じていました。しかし、メンタリングを通して思い込みから解放され、だんだん人に任せられるようになり、事業を拡大させる道筋を作ることに集中できるようになってきました。
── メンターの山岸さんはどのようなことを意識して森山さんに接しましたか?
山岸:意識していたのは、本音で話すことだけです。これまで自分が経験してきたことや、他のスタートアップを見ていて感じたことの中から、良い部分もそうでない部分も、素直に伝えるようにしてきました。「これやったほうがいいよ」「これ気を付けたほうがいいよ」と押し付けることはせず、一つひとつのアドバイスを採用するか否かは森山さんに任せるようにしました。
森山:山岸さんが話してくれた経験や事例はどれもリアルで、いい意味で、等身大でした。大きなことを成し遂げるための行動を分解してみると、一つひとつは大したことではありません。でも、そんな誰にでもできることを地道にやり続けることがどれだけ大切か、改めて感じられる時間でした。
僕は、世の中に必要とされるよいものを作っている会社こそが「本物の会社」だと思っています。そんな本物の会社になるためには、大それたことをする必要はなく、当たり前のことを着実に積み重ねていけばいいのだと腹落ちしました。
山岸:そうですね、最初の一歩を踏み出す瞬間はそれが大きな一歩だとは思っていません。でも、その小さな一歩を重ねていった先に、違う景色が広がっているんだと思います。
「高齢者のライフコンテンツの会社」と決めた

── 今回のプログラムを通して達成できたことを教えてください。
森山:僕にとって得るものがとても多いプログラムでした。何よりもまず「emomeが何の会社なのか」が定義できたことを、非常に大きな成果だと感じています。アイデンティティが定まったことで、会社として何を大事にすべきかが見えるようになりました。言葉にすると簡単に聞こえるかもしれませんが、大手企業ですら迷走してしまうこともある部分で、そこが定まらないと、打つべき手も採用も決まりませんから。
2つ目の成果は、自分自身がオフィスにいる時間を半分に減らせたことです。具体的には、1日8時間いたのが4時間になりました。前はオフィスにいないのは申し訳ないことだと感じていたのですが、人に任せて離れることで、自分の立ち位置を1メンバーからオーナー寄りに変えることができました。要するに、自ら事業会社に営業に行く「トップ営業マン」から、「会社の未来のためにどのリソースを投下すべきかを考える仕事」に変わったわけです。
僕自身の役割を変えたことにより、寺井も成長してくれました。僕が営業から外れたことで、彼はいま営業を統括する立場となり、現場をリードしてくれています。それまでは「いざとなったら森山さんが助けてくれる」というところがあったと思うのですが、事業を自分ごととしてとらえるようになり、強い責任感が生まれたと感じています。
山岸:寺井さんは、メンタリング期間中に、森山さんと僕の会話をずっと聞いていました。彼なりに吸収するものもあったと思いますし、森山さんが悩んでいる部分を知って、自分の役割を自覚したというのもあるのでしょう。
森山:僕が直接寺井に言えない悩みも、山岸さんに聞いてもらう形であれば話せたので、それを聴いてもらえたのがよかったと思っています。
── ありがとうございました。最後に、今後の展望をお聞かせください。
森山:僕はこのプログラムを通して、emomeを「高齢者のライフコンテンツの会社」と定めました。つまり、事業の軸は、高齢者がよりいきいきと暮らし、我々現役世代と変わらない生活水準を保つためのコンテンツを提供していくことです。
今後の展望としては、実店舗で顧客のアカウントを保有する事業を全国展開していきます。「シニアカレッジ」というオンデマンドのプラットフォームで培ってきた知見をベースに、今度は我々が直接運営をして、コンシューマーを捉えていきたいです。
KOIL STARTUP PROGRAMについて
「KOIL STARTUP PROGRAM」は、柏の葉スマートシティにあるイノベーション拠点KOILにおいて、2022年より始動したスタートアップ支援プログラムです。 新産業創造を牽引するスタートアップの成長支援を目的に、KOILの無料利用、ビジネスプラン作成セミナーや個別メンタリングをパッケージ化したプログラムを用意しています。本プログラムを立ち上げることで、柏の葉スマートシティにおけるスタートアップの集積と事業成長、さらにはスタートアップ・コミュニティの醸成を促進し、柏の葉スマートシティにおける新産業創造をより一層加速していきます。
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