【スタートアップ&メンター対談】 2025.12.10

大型案件の受注、そして柏の葉での実証実験へ──「本気で向き合うメンタリング」が紡いだ、事業の次のステージ

イオリア株式会社 松原元気氏とTEPメンター市村慶信氏の対談
参加企業   イオリア株式会社
事業概要 地方の情報空白を生成AIで解消することを目指し、位置情報と連携して生活者一人ひとりに最適化された地域情報を提供するAIエージェント「SpotsNinja」を提供。中規模都市を中心に、新たな日常の発見を届けている。
プログラムで得た実績 ・プロ野球球団との事業連携が進んだ
・大手経済メディアで「2026年に活躍が期待されるAIスタートアップ」として紹介された
・大手航空会社と事業連携に向けた取り組みが開始した

柏の葉の新産業創造を牽引するスタートアップ支援プログラム「KOIL STARTUP PROGRAM 2025」では、約4か月間にわたってスタートアップの事業成長を後押ししてきました。

今回は、地域特化のクラシファイドメディア「SpotsNinja」を提供する「イオリア株式会社」CEOの松原元気氏と、TEPメンター 市村慶信氏のお二人をお呼びして、メンタリングの感想や全プログラムを終えて感じること、今後の展望を伺いました。

イオリア株式会社 CEO 松原元気 氏

2013年に大手電機メーカーへ新卒入社。その後、複数のゲーム会社やインターネット企業にてゲーム開発やソフトウェアの開発に携わり、さらにEdTech領域の企業にて教育プロダクトの開発を担当し、2023年10月にイオリア株式会社を創業。

TEPメンター 市村慶信 氏

大学卒業後、業務を通じて電子機器のサプライチェーンの理解を深める。その後2007年から家業である電子部品商社に移り、経営の立て直しを行いながらベンチャー企業への技術提案や経営支援を実施した。2014年に株式会社プロメテウスを創業し、これまでの経験を活かして国内外で非メーカーのプロジェクトの立ち上げ・経営サポートを行っている。


事業の本質に向き合う対話が導いた、確かな案件受注という成果

メンタリング風景

── プログラムが終わってみてのお互いに対する印象や感想についてお聞かせください。

TEPメンター 市村慶信(以下「市村」):松原さんに最初に会ったとき、若くてキレがある印象を受けました。しかしながら、メンタリングを通じてお話をさせていただくうちに、若くてエネルギッシュなチームだからこそのモヤモヤ感や課題感を抱えていることがわかりました。そういった課題感を外部にシェアするのは難しいものですが、プログラム期間中、松原さんが繊細な部分も含めてしっかりと自己開示してくれたおかげで、表面上のわかりやすい話に留まらず、本質的な話ができ、とても良かったと思っています。

イオリア株式会社 CEO 松原元気(以下「松原」):いろいろなメンターさんがいるなかで、僕は最初から市村さんにメンタリングしてほしいなと思っていました。自分と同じようなエネルギーや熱さを感じ、相性が良さそうという直感があったので、1泊2日の合宿のときも、どんなお話をされるのか気になって、隣のチームまで聞きに行っていました。市村さんの本気で人に向き合って本質的な話をされるところが、僕は好きなんです。困っていることをありのまま話したときも、市村さんは前向きに、リスペクトを持って意見を伝えてくれて、すごくありがたかったです。

── プログラムは期待していた通りの内容でしたか?

松原:実は、当初は三井不動産さんや柏市さんとの連携を前提としたプログラムという認識をしていたため、ヒアリングから取り組みが始まった際に「期間中に連携まで進められるのかな」という疑問を少し感じていました。

市村:ヒアリングは重点的に行いましたね。というのも、参加期間中に連携をするというような出口を設定し、それにフォーカスして取り組みを進めていくことが、事業に非常にプラスになる場合もあれば、うまくはまらない場合もあると思っています。このプログラムは、参加される方がやりたいことや実現したいことに向けて進んでいくことにメンターが伴走するもので、出口ありきではありません。そう考えると、最初に松原さんおよびイオリアという会社の現在地、これからどの方向に進みたいか、どんな目標に到達したいかを、しっかりとヒアリングすることが大事かなと思っていました。

松原:確かに最初は少し焦っていたものの「本質的な事業支援」という、プログラムの趣旨を踏まえると、ヒアリングから始まるのは非常に合理的で、納得感がありましたね。

── 約4か月間のメンタリングを通じて、プログラムへの参加目的をどのように達成できましたか?

松原:最初の目的は柏市さんや三井不動産さんと事業連携して実績を作ることだったのですが、途中で方向性の違いに気づき、いろいろな話をしてアドバイスをいただいた結果、プロ野球球団からの案件を受注できました。当初の想定とは違う形で、目的が達成できたと思っています。案件を受注できたのは、メンタリングを通じて企業側の視点を得て、ビジネスプランをブラッシュアップできたからです。エンジニア視点で「この素晴らしい技術を使おう」ではなく、相手の立場になって、何に困っているのか、そこに自分たちの強みがどうマッチするのかを考えた上で、提供価値を言語化できたのがよかったと思っています。

「焦り」が手放せた4ヶ月。視野が広がり、顧客起点の伝え方ができるように

対談中の松原氏と市村氏

── 松原さんから見て、メンタリングではどのようなアドバイスが印象的でしたか?

松原:市村さんは、こちらの考えや迷いを一度しっかり受け止めたうえで、次の一歩につながる形で返してくれた点が印象的でした。だからこそ、本音を話しやすく、前向きに議論を続けることができました。メンタリング中の対話そのものが、自分の挑戦を後押ししてくれる場になっていたと感じています。

── メンターから見て、スタートアップ側に最も成長を感じた瞬間はどんな場面でしたか?

市村:プロダクトありきではなく、顧客の課題感を踏まえて、そのプロダクトが提供できるバリューを提案できるようになったのが素晴らしいと感じました。松原さんは最初から技術力という強いカードは持っていたのですが、プログラム中に本来持っているエネルギッシュな部分や人懐っこい部分という別のカードの使い方も覚えて、人として分厚くなった印象です。懐が深くなって、全体的にしっかり勝負ができるようになったと感じています。

松原:以前はスタートアップとして求められるような急成長するストーリーをずっと追いかけ、常に何かに焦っていましたが、今はその焦りがなくなりました。プログラムを通じてほかのスタートアップと話して、悩みを共有できたことで、みんな一緒だと気づけたのも大きかったと思います。

── フィードバックを受けて「事業の方向性」や「伝え方」が変わった部分はありますか?

松原:最初の頃は、エンジニアとしてこだわりがあり尖っていたというか、最新の技術を使って勝負しようと考えていたところがありました。ただ、今振り返ってみるとユーザーに何を届けるかよりも、どの技術を使うかが先に来ていました。しかし、フィードバックを受けて、多面的なものの見方ができるようになり、顧客の課題に沿った伝え方ができるようになりました。手持ちのカードの種類が増えたような感覚で、とてもありがたかったです。

事業連携や大手経済メディアへの掲載──そして柏市での実証実験に向けた準備へ

プログラム参加風景

── プログラム全体を通しての感想や、良かったところを教えてください。

松原:技術的な強みはあるけれど会社として何から着手したらいいかわからない僕のような経営未経験のエンジニアには、すごくありがたいプログラムでした。個人的な悩みの相談から会社をどうしていくかまで、何でも相談できる場だったと感じています。コミュニティとしての柏の葉という場所も良かったですね。土地柄なのか、共感から始まるカルチャーがあり、起業家の孤独な気持ちを支えてもらえたと思っています。

市村:三井不動産さん、柏市さんの懐の深さが目立つプログラムで、のびのびとやらせていただけました。今後もチームや企業の現在だけでなく、向かう先を見据えて支えていけたらいいなと思っています。KOIL STARTUP PROGRAMはファンクションだけでなく、コミュニティも強みだと思うので、話をしに行きたくなるような場所であり続けたいです。TEPメンバーは多彩なバックグラウンドを持つ人たちが揃っているので、解決の糸口も見つけやすいと思います。

── 個人として達成できた成果と、会社として達成できた成果を教えてください。

松原:僕個人の成果として、1つ目は、プレゼンテーションの場慣れができたことです。練習を通して改善点を見つけたり、ほかの人のいいところを見て参考にしたりできました。2つ目は、先ほど手持ちのカードの種類が増えたと言ったことに通じますが、ひとつ上のレイヤーから物事を見られるようになったことです。3つ目は、コミュニティを通して仲間ができたことで、焦らなくなったことです。懐が深くなったというか、ドンと構えていられるようになりました。

会社としては、先ほどお話ししたプロ野球球団からの案件受注に加えて、大手経済メディアにて「2026年に活躍が期待されるAIスタートアップ」として紹介いただいたことが印象的です。また、航空会社と事業連携も進みつつあります。

── 今後の展望や柏の葉での実証実験の予定などがあれば教えてください。

松原:現在、柏市の担当者と、実証実験に関してメールでやりとりをしています。具体的な進め方はこれから話し合うことになりますが、「SpotsNinja」で、自治体のデータを用いて住民の方に町の情報を伝えていく仕組みを実用化していきたいですね。

── プログラムが終わり、今後取り組んでいきたいことを教えてください。

松原:会社としての土台をより作りこんでいきたいと考えています。先ほどの航空会社の案件をはじめ、プロダクトを磨き込むことで、さらにお客様を引き込める状態をつくっていきたいと思っています。また、会社としての見せ方もブラッシュアップし、信頼を積み上げていきたいと考えています。現時点では、無理に資金調達を行う必要性は感じていません。AIの活用によって事業を進めやすくなっていることも踏まえて、時代に即した成長戦略を描いていきたいと思っています。

── 最後に、今事業を立ち上げようとしているスタートアップに向けて一言メッセージをお願いします。

松原:起業家は孤独を感じることがありますが、助けてくれる方はいるので、信頼できる人を見つけて、力を借りるのはすごくいいことだと思います。僕ももっと早くこのプログラムに関わっていればよかったなというのが正直な気持ちです。

市村:事業のスケールや成長スピードにこだわらず、起業家の皆さんがやりたいこと、成し遂げたいことに寄り添える環境が、KOIL STARTUP PROGRAMにはあります。一緒に考え、悩んでくれる人がいる場所だと思って、来てもらえるといいのかなと思います。


KOIL STARTUP PROGRAMについて

「KOIL STARTUP PROGRAM」は、柏の葉スマートシティにあるイノベーション拠点KOILにおいて、2022年より始動したスタートアップ支援プログラムです。 新産業創造を牽引するスタートアップの成長支援を目的に、KOILの無料利用、ビジネスプラン作成セミナーや個別メンタリングをパッケージ化したプログラムを用意しています。本プログラムを立ち上げることで、柏の葉スマートシティにおけるスタートアップの集積と事業成長、さらにはスタートアップ・コミュニティの醸成を促進し、柏の葉スマートシティにおける新産業創造をより一層加速していきます。


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