【スタートアップインタビュー】 2022.9.16

メンターによる熱く献身的なフォローアップで、事業の可能性に確信を持てるように!

株式会社Redge
代表取締役 稲垣 大輔 氏、サポートメンバー 中山 正光 氏

柏の葉の新産業創造を牽引するスタートアップ支援「KOIL STARTUP PROGRAM 2022」では、3社のスタートアップを迎え入れ、各社の事業成長をハンズオンで後押ししています。
今回は、海外の途上国向けの臨床工学技術を活用した医療機器管理教育システム研究開発や、医療機器開発支援、コンサルティング事業を推進し、地域に医療格差のない世界を目指している「株式会社Redge」の代表取締役・稲垣氏と、サポートメンバーの中山氏に、TEPビジネスプラン作成セミナー(以下、セミナー)の感想と、その後のプログラム期間の意気込みを伺いました。

セミナー期間の学びを増やすために取り組んだ選択と集中

――セミナーを受ける前は事業の構想にどのような課題があると感じていましたか?

稲垣:事業の「国内展開」の実現にどう取り組むかについてですね。私たちの医療機器管理教育システムは、MVP(Minimum Viable Product)という必要最小限のシステムはできており、その実証実験をオンラインで日本、タイ、ラオス、ベトナムで行い、国内にもニーズがあることは確信していました。ただ国内の場合は医療機器管理システムの市場は既にできあがっていることや臨床工学技士の業界の慣習からも、海外途上国サービスの単純な「国内横展開の実現」はハードルがあるんですよね。国内での実績があれば海外でも受け入れられやすく、同時に海外での実績があれば国内向けのアピールもできる、ということから、国内外両軸展開は視野に入れています。そのため、今回のプログラムに参加することで、事業のブラッシュアップや国内展開に向けたネットワークを広げたいと考えていました。

――セミナーを受けてから浮き彫りになった課題はありましたか?

中山:セミナー初日の事業紹介ピッチでは、国内外両軸展開の大きな構想について話をしたのですが、「結局海外と国内どっちからやるの?」という意見をもらいました。我々としては、入れる市場から取り組んで、フィードバックをもらってブラッシュアップしていくスタンスだったのですが、セミナー期間中の議論がズレないように、また、海外途上国の医療現場の機器の状況のほうが日本より課題があったので、海外向け事業のブラッシュアップに集中しました。

事業の内容自体は社会的に評価が高い課題だと認識されるのですが、メンターからは「ビジネスとして収益化はできるんですか?」と突っ込まれることが多かったです。経営改善をすることで少しは収益化できるのではないかと思ってはいるものの、いただいたフィードバックはしっかり受け止めつつ、自分たちの仮説は持ちながら答えを見つけていきたいと思っています。

――セミナー期間の中で一番印象的だったことを教えてください

中山:起業経験やスタートアップ支援実績が豊富な歴戦の勇者たちがメンターとして時間とリソースを割いて参加者のフォローアップに取り組んでくれるということにとにかく驚きました。チームの中に運営陣が入ってマメにコメントしてくれますし、チーム外の人からもアドバイスをいただきました。とにかく本気でビジネスを成功させるため時間も労力も惜しまない、というメンターの熱意に感激すると同時に、この方々と同じ土台に立てるように頑張りたいと思えるようになりました。受講者たちも本気で自分の人生をかけて事業を変えようとしており、皆さんと同じ空間で共有した熱い時間はとても良い刺激になりました。

特に前半の宿泊型のセミナーで印象的だったのが、恒例の裸のお付き合い「お風呂メンタリング」です。近い距離で相談できるので、メンターも受講者も一体となって頑張っていこう、という仲間意識が高くなりましたね。

―セミナー期間の講義はいかがでしたか?

中山:実際にあったビジネスの成功/失敗事例や講師自身の具体的な経験談も聞くことができたので面白かったですね。「何かモノを売るにしても現地に行って、その地域に住む人の考え方とか肌感を意識しないといけない、ただ良いものを作っただけでは売れないんだ」と海外展開する上で大事なことに気づけました。

セミナー期間で学んだ「現場を知ること」の大切さ
現場を知るために実行したカンボジア視察

――セミナーを受けて、どのようなことに一番の学びや成長を実感しましたか?

稲垣:中山さんがプレゼンを行ったのですが、最初の期間のプレゼンや質疑応答を見て「二人とも同じ目線だと思っていたのに実は認識が違っていた、私の考えがきちんと伝わってなかったことがある」とわかったことは衝撃的でした。でも、セミナーを通して、内容がどんどんブラッシュアップされ、経験的にも知識的にも二人の共通認識が合致してきたことは、大きな成長を感じました。

自分一人だけで進めているのではなく、やりたいという熱意や同じ認識で目標を持って一緒に動いてくれるメンバーができたことによる伸びしろはあったと思います。もう一つ、海外の医療現場は「実際のところどうなの?」と言われることが多かったので、情報をアップデートするためにも、カンボジア視察に行く決意をして、実際に行けたことは大きかったです。

中山:実際に現地に行ってヒアリングをして、ペインを実感できたのは大きいです。例えば現場で10台稼働できるはずの透析装置が8台使えないというクリニックを訪問しました。日本では壊れた状態で放置されるなどありえないことですが、現場では様々な問題が幾重にも重なった結果、解決が難しくなっているという問題を実際に目で見たり、話を聞くことで理解が深まり、今開発しているシステムの重要性を認識しました。

――1か月間どのようなメンタリングを受けてきましたか?

中山:基本的にはセミナーでプレゼンをしたら、メンターからそれに対しての質問と感想が届きます。また、週に1回メンタリングが組まれていて、宿題を提出すると大量のコメントをもらえました。対面式の講義がある日以外はスラックでやり取りをしているので、稲垣さんもスラック上で一緒にメンタリングを受けていました。
メンタリングがあることで、宿題を提出する期限が自動的に決まるため、それまでに調査や論点の整理をするなど間に合うように頑張ることができました。

また、何百何千のスタートアップをこれまで見てきたメンターの方の言葉は重みが違いました。「実際に手足動かしてやったもん勝ち。いろんなこと言う人もいるけど、最後は自分の熱意に従って、そこを信じてやってみなさい。倒れたら助けてあげるから精一杯やりなさい」、「種は大事に育てていかなくてはいけない。自分の経験を生かしてお手伝いできることがあればなんでもするから。日本がよくなればよくて、俺は何もいらないと思ってやっている」など、素晴らしい方々に近い距離で話を聞いてもらえるだけでなく、身をもって教えてくれるということに感激しました。
アットホームな雰囲気もあり、非常に充実したメンタリングや講義でした。チャンスがあるならもう一度受けたいです。

――残り5ヶ月間のプログラムをどのように活用していこうと考えていますか?

稲垣:今回のセミナーでは、海外向けの事業のブラッシュアップはできたので、これからは国内向けの展開について詰めていきたいと考えています。色々意見をいただきましたが、これからすべき具体的な取り組みとして、例えば国内は自治体とどう組んでいくか、海外はユーザー数を増やすというメインのテーマ自体はブレていませんので、自分たちの事業に確信をもてる期間にもなりました。

中山:とにかく現場のペインをわかりやすくかみ砕いて、専門的な事を知らない人にも共感してもらえるような話の持っていき方によって、その後の議論が変わってくることがわかりました。中間報告会では国内の話をメインにするにしてもストーリーが変わってくるので再構成は大変かなと。やりたいことが多すぎて全部は盛り込めなくなるので、12月までメンタリングを受けながら精査していきたいです。

◆日本の臨床工学技術をプロダクトにして開発途上国に提供|CeTrax

開発途上国では、医療に関して先進国から人材教育や設備などの支援を受けているものの医療水準が未だに向上しきれていません。

株式会社Redgeは開発途上国の医療の質を担保するためには「いつでも使えるよう整備された医療機器」と「正しく医療機器を使用できる習熟者」の両立が必須であると考えており、「管理/教育」パッケージシステムの「CeTrax」を構築して、日本の臨床工学技術を開発途上国向けに展開するビジネスモデルの実現を目指しています。

セミナー最終日に行われた選抜者プレゼンテーションでは、ビジネスプラン作成セミナー期間中に訪れたカンボジアの医療機関へのヒアリング内容を踏まえながら、事業構想や今年度のアクションプランの発表をしました。
審査員からは、ビジネスプランの費用対効果や医療機器メーカーの巻き込み方など、収益化できるスキーム作りについて質問やアドバイスがあがりました。


PROFILE

株式会社Redge 代表取締役 稲垣 大輔 氏
臨床工学技士:CE・公衆衛生学:MPH(修士)
途上国への医療支援を通して、現地の医療課題を認識したことで、神奈川県立保健福祉大学ヘルスイノベーション研究科に進学。医療機器開発プロセスを学べる東京大学バイオデザインフェローシッププログラム修了し、アジア・アフリカ向け医療機器開発も目指している。JHeC2022アイデア部門グランプリ受賞。

サポートメンバー 中山 正光 氏
大学院博士課程において血栓研究に従事。医療機器開発プロセスを学べる東京大学バイオデザインフェローシッププログラムを修了、アジア・アフリカ向け医療機器支援プロジェクトで代表の稲垣と出会う。本当に困っている人へ適切な医療支援を実現したい、というビジョンに共感し、サポートメンバーとして参画。


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