点在していた経験が事業を進める武器に──プログラムで体系化した「デザインメソッド」と、柏の葉で始まる次の挑戦
| 参加企業 | 株式会社ICOMA |
|---|---|
| 事業概要 | 「おもちゃから発明する」視点を強みに、折りたたみ電動バイク「TATAMEL BIKE」など、楽しく実用的なモビリティを開発。マイクロモビリティ、ロボットを主軸に社会実装に向けた製品開発を行っている。 |
| プログラムで得た実績 |
・企業独自のデザインメソッドの確立 ・大手の自動車メーカーから、コンセプトカーのおもちゃの設計を依頼された ・乗り物メーカーから、プロダクトを「触れるおもちゃ」にする受注を得た |
柏の葉の新産業創造を牽引するスタートアップ支援プログラム「KOIL STARTUP PROGRAM 2025」では、約4か月間にわたってスタートアップの事業成長を後押ししてきました。
今回は、「おもちゃのこころで、ミライをつくる」というキャッチコピーを掲げてものづくりを行う「株式会社ICOMA」代表取締役社長の生駒崇光氏と、TEPメンター山岸朝典氏のお二人をお呼びして、メンタリングの感想や全プログラムを終えて感じること、今後の展望を伺いました。
株式会社ICOMA 代表取締役社長 生駒崇光 氏
桑沢デザイン研究所プロダクトデザインコースを卒業後、大手玩具メーカーで海外事業を担当したのち、IoT家電メーカーにて製品開発に従事。その後のロボットベンチャーでは家族型ロボットの開発に携わる。2021年、自身が開発してきた電動バイクの製品化を目的にICOMA Inc.を創業。
TEPメンター 山岸朝典 氏
池森ベンチャーサポート合同会社(ivs) 事業統括責任者/公認会計士
監査法人、事業会社の経営企画などを経て、Fancl創業者である池森賢二氏が2018年11月に立ち上げたivsに創業時から参画。"社会起業家に光をあてたい"という同氏の思いを実装すべくハンズオンで起業家支援に取り組んでいる。
スキルを整理し戦略へ。壁打ちを通じて辿り着いた「デザインメソッドの体系化」への道
── プログラムが終わってみてのお互いに対する印象や感想についてお聞かせください。
TEPメンター 山岸朝典(以下「山岸」):生駒さんは、ものづくりの豊富な経験と確かな実績をお持ちで、ビジネスの骨格も固まっていました。そのため、当初は自分がどの点で役に立てるのか少し考えるところがありました。ヒアリングを重ねるなかで、「事業をどのように人へ伝えるか」という悩みが中心にあるとわかり、メンターというよりも友人のような感覚で、率直にさまざまな話をしてきました。生駒さんは、それまで一人でたくさんのことを抱え込み、同じところをぐるぐる回っているような感覚があったのではないかと思います。なので、チームメンバーとはまた違う立場の僕を相手に、頭の中にあるものを吐き出してもらうようにしました。
株式会社ICOMA 代表取締役社長 生駒崇光(以下「生駒」):自分はエンジニアやデザイナーとしての「個」の力には自信があったものの、スタートアップというビジネスの世界において、グロースモデルを作れている実感がありませんでした。売上を作っていくために、どのような会社になればいいのか、自社製品と受託製品のバランスをどうしていくべきか、というのがプログラム開始前の課題でした。ベンチャーキャピタルに話す前に山岸さんに壁打ち相手になってもらい、本音で話せたことで、ビジネスプランをまとめられました。山岸さんが非常に気さくに接してくださったおかげで、いい意味で気を遣わずに自己開示が進み、ざっくばらんに相談しながらメンタリングを受けられたと感じています。
── プログラムは期待通り、もしくは期待以上の内容でしたか?
生駒:以前から KOIL MOBILITY FIELD を利用していましたが、三井不動産の皆さんと直接つながる機会はなかったため、このプログラムを通じて事業の可能性を広げる接点が持てればと期待していました。実際のプログラムはとても密度が高く、非常に充実した内容だったと感じています。お互いに高め合える横のつながりができたことも、大きな収穫でした。事業を成長させたいという確かな意思を持つ方であれば、期待以上の価値を得られるプログラムだと思います。
── 約4か月間のメンタリングを通じて、参加当時の課題をどのように解決したのか教えてください。
山岸:できることはいろいろあるけれど、自分たちが本当にしたいことは何か、会社としてどの方向を向くべきかという、バリューやビジョンの言語化からスタートしましたよね。
生駒:そうですね。その話し合いを経て、ジャパンモビリティショーで自分たちのビジョンを伝えることをKOIL STARTUP PROGRAMのゴールに設定しました。山岸さんから「生駒さんのデッキにはカードはいっぱいあるけれど、どれを出すべきか迷ってしまっているよね」とご指摘いただいたので、そこから手持ちのカードを整理し、戦略を練ることができました。それが、デザインメソッドの体系化です。自分たちはごちゃごちゃした会社ではあるものの、それ自体がイノベーションを生み出す手法たり得ると考えたのです。このアプローチを製造業やディープテックに紐づかせていけば、培ったスキルを社会に役立てられ、スタートアップとしてもバリエーションを増やせると思いました。そこにポテンシャルを感じた企業の方々からコメントをいただけたことは自信につながり、当初のゴールに到達できたと感じています。
「ロボット」という表現を手放して──言葉を再定義することで浮かび上がった事業の核心
── 生駒さんは、今回のメンタリングで受けたアドバイスをどう感じましたか?
生駒:山岸さんはハードウェア業界のリアルな感触を持ちながら、資金調達のムード感や今のトレンドもしっかり押さえておられます。情報の移り変わりが早い世界ですから、ベンチャーキャピタルの視点で鮮度の高い情報を直接聞けるのは貴重ですし、率直なアドバイスがありがたかったです。
── メンターの山岸さんが、生駒さんの成長を感じた瞬間はありますか?
山岸:生駒さんはもともと思考の解像度が高く、物事を本質から捉えられる方だったので、成長を感じた瞬間というよりも、生駒さんの凄さを感じる瞬間が、メンタリング中、何度もあったというほうが正しいかもしれません。たわいもない話を、パパっと頭の中で整理して要件にまとめ、形にしていく能力には驚かされましたし、それがものづくりの力につながっているのだろうなと感じました。
生駒:自身のスキルセットや能力値のパラメータはあまり変わっていないかもしれませんが、山岸さんと話し合うことで、どのスキルをどこで使うべきかを自覚していけた感覚です。頭の中にあったプランの解像度を高くでき、市場やクライアントの先にある、プロダクトをアウトプットする相手が明らかになったと感じています。
── フィードバックを受けて「事業の方向性」や「伝え方」が変わった部分はありますか?
生駒:山岸さんに「生駒さんは『ロボットを作りたい』と言うけれど、その『ロボット』がわからない」と言われて、ハッとしました。僕は幼少期からロボットを作りたかったので、自分の中には明確なロボット像があるのですが、それを一言では言い表せないんですよね。まだ市場化されていないプロダクトに対して持つイメージ像は、世代間ギャップもありますし、個人によってもかなり違うということに気付きました。
山岸:ロボットと聞くと「効率化を追求していくもの」「自動化するためのツール」という印象を持ちます。でも、生駒さんが思い浮かべているロボットは、血が通っていて、体温を持っている存在なんですよね。
生駒:その言葉がとても刺さったので、ロボットという言葉を主語にするのをやめて、スライドからも抜きました。ロボットという言葉を使わず、そこにある意思を感じてもらうために言葉を選んだことで、提供価値が人に伝わるものになったと思います。
技術だけでは届かない「伝わる事業」へ。プログラムで磨いた実践力と、柏の葉でさらに広がる事業の可能性
── プログラム全体を通しての感想を教えてください。
生駒:ディープテックやデザインなど、技術はあるけれど、言語化や社会への落とし込み方がわからないスタートアップにはピッタリなプログラムだと思います。また、資金調達に関しても現実的な進め方がわかりました。起業されて間もない方だけでなく、自分と同じく起業して数年経っていて、新しい指し手を見つけなくてはと感じている企業にとっても、非常に参考になることが多い内容だと思います。
山岸:プログラム後半はジャパンモビリティショーの準備もあり、生駒さんと十分にお話しできなかった部分もあるため、これからもぜひ対話を続けていきたいですね。生駒さんのビジネスは、キラキラした派手なものではないかもしれません。でも、エンジンが付いているモビリティには絶対にブレーキが必要なように、ものづくりには生駒さんの持っているデザインの力は絶対に必要です。そういった根幹的な部分に立ち返って、考えることができた期間でした。
── 今回達成できた成果を教えてください。
生駒:プログラムの中で生まれたアプローチをもとに、大手の自動車メーカーさんから、コンセプトカーのおもちゃとして設計してほしいというお話をいただいています。企画のために開発するおもちゃ、社会実装を検証するためのおもちゃ、世の中に知らしめるためのノベルティとしてのおもちゃの3種類があり、非常に嬉しいお話です。乗り物メーカーのプロダクトを「触れるおもちゃ」にするという受注もいただいています。おもちゃにしてノベルティとして渡すことで、世界観を持ち帰ってもらい、話し合いの材料にしてもらったり、ファンになってもらったりすることが狙いです。営業チラシとは違う、ブランディングの価値があると考えています。そのほか、事業が忙しすぎておもちゃを作る時間がないというスタートアップから、社会実装のためのノベルティづくりの依頼もいただきました。
── KOIL STARTUP PROGRAMならではの良さを教えてください。
生駒:世の中にアクセラレーションプログラムは多くありますが、メンターと本気で向き合いながら、自分たちの課題を丸裸で晒せるといった点が、KOIL STARTUP PROGRAMならではの良さだと思います。「こういう事業を実現したい」という思いを持ち、本気で立ち向かいたい人にはぴったりです。
山岸:熱く、本音でぶつかってくれるメンターが多くいるところだと思います。単純にグロースさせるためというより、メンターと共に過ごすことで、もう一回自分と向き合い、本質に立ち返れることが、このプログラムの一番の魅力ではないでしょうか。
── 今後の展望や柏の葉での実証実験の予定などがあれば教えてください。
生駒:来年、世界最大級のビジネスカンファレンス&フェスティバルSXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)にも出展するので、初見の人にも価値のある素敵なことだと言ってもらえるような、シンプルなプレゼンをしていきたいです。そして、子どもにいい未来を見せていきたいという観点から、柏の葉でのワークショップをぜひ実施したいと思っています。柏の葉は教育関心が高いエリアですし、すごくいい実証フィールドと、スマートシティがあるので、それを存分に生かしていきたいですね。
── 最後に、今事業を立ち上げようとしているスタートアップに向けて一言メッセージをお願いします。
生駒:確かな芯を持って、力強く事業を成長させていきたい方に、ぜひこのプログラムをおすすめします。メンター陣と本気で議論をすることで、心にあるモヤモヤを晴らして、大きく成長できる機会になると思います。
山岸:僕を含めてメンター陣は、未来の世界のために本当に価値のある事業を応援したいと思っています。もし悩んでるなら、一緒に話をしましょう。一人で抱えるのではなく、ぜひ対話をしながら、一歩でも二歩でも共に進んでいけたらいいなと思います。
KOIL STARTUP PROGRAMについて
「KOIL STARTUP PROGRAM」は、柏の葉スマートシティにあるイノベーション拠点KOILにおいて、2022年より始動したスタートアップ支援プログラムです。 新産業創造を牽引するスタートアップの成長支援を目的に、KOILの無料利用、ビジネスプラン作成セミナーや個別メンタリングをパッケージ化したプログラムを用意しています。本プログラムを立ち上げることで、柏の葉スマートシティにおけるスタートアップの集積と事業成長、さらにはスタートアップ・コミュニティの醸成を促進し、柏の葉スマートシティにおける新産業創造をより一層加速していきます。
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