【スタートアップ&メンター対談】 2023.3.22

対話とアクションの積み重ねで、事業のベクトルが鮮明に!

株式会社Medifellow 取締役COO 池田 宇大 氏
TEPメンター 山岸 朝典 氏

柏の葉の新産業創造を牽引するスタートアップ支援「KOIL STARTUP PROGRAM 2022」では、3社のスタートアップを迎え入れ、半年間にわたって各社の事業成長を後押ししてきました。

今回は、日本人専門医による海外在留邦人向けオンライン医療相談サービス“Doctorfellow”を提供する「株式会社Medifellow」取締役COOの池田宇大氏に、TEPメンター山岸朝典氏によるメンタリングの感想、全プログラムを終えて感じること、そして今後の展望を伺いました。

株式会社Medifellow  取締役COO 池田 宇大 氏

岐阜薬科大学薬学部卒 医療機関の経営コンサルティングを経験。大学病院や自治体病院、公的病院の経営改善に通算30病院程度従事。後、HR業界で採用支援コンサルティングを経験。クロスボーダーの転職・就職支援に従事。複数0からの事業開発経験。

山岸 朝典 氏

池森ベンチャーサポート合同会社(ivs) 事業統括責任者/公認会計士
監査法人、事業会社の経営企画などを経て、Fancl創業者である池森賢二氏が2018年11月に立ち上げたivsに創業時から参画。“社会起業家に光をあてたい”という同氏の思いを実装すべくハンズオンで起業家支援に取り組んでいる。

異なる視点で捉え直すと、事業のベクトルが定まった

── メンタリング開始時、お互いの第一印象はいかがでしたか?

株式会社Medifellow 取締役COO 池田宇大(以下「池田」):「あ、知ってる人だ!」と思いました。というのも2年ほど前、山岸さんと直接メッセンジャーでやりとりしたことがあったんです。資金調達に関する内容で、こちらからいきなりご連絡したのですが、とても丁寧に返信をくださったので印象に残っていました。

TEPメンター 山岸朝典(以下「山岸」):私は基本的にどなたかの紹介を通じた依頼が多いので、直接連絡されてきた池田さんのことはよく覚えていました。そのときはあいにく予定が合わず、ゆっくりお話しすることが叶わなかったのですが、今回たまたまKOILのプログラムで再会して、本当に驚きました。不思議なご縁です。

池田:今回のプログラムで山岸さんとお会いした印象は、2年前にやりとりした当時と変わりませんでした。優しくて誠実で、でも重要なポイントではしっかり指摘してくれる方だな、と。

山岸:池田さんの第一印象は「マシュマロみたい」。ほわっとしていて、すべてを包み込むような方だと思いました。いわゆる「起業家らしさ」というか、ギラギラした感じはあまりないですよね。

── メンタリングを通して、その印象は変わりましたか?

山岸:池田さんはすごく積極的に情熱を語るタイプではないですし、ときどき「真剣に考えているのかよくわからないな」と思うときもありました(笑)でも、しばらく見守っているうちに、きちんと考えていることがわかってきた。プログラム後半は週に1回のペースでミーティングしていたのですが、ある日のミーティングで「これやってみようよ」となったら、翌週にはちゃんと「やってみました」と成果を見せてくれるんです。やらないのかなと思いきや、やる人なんですよね。「行動で語るタイプ」とも言えます。

池田:もっと「起業家」らしく、熱く語るキャラになったほうが良いのでしょうか……

山岸:そこは、チーム内でのバランスが大事だと思いますよ。これまでいろいろなベンチャーを見てきましたが、「自分の想いを熱く語れる人+客観的かつ冷静に判断できる人」など、違うタイプのメンバーがいるチームのほうがうまく行く傾向にあると思います。

池田:なるほど。弊社代表は私とは全く異なるタイプなので、そういう意味では今の状態でバランスが取れているのかもしれませんね。

── 5ヶ月のメンタリングを通して、主にどのような課題に取り組みましたか?

池田:「課題の整理」が今回の課題でした。前回のインタビューでは、メインである海外在留邦人向け事業のほかに、国内の日本人や外国人向け事業を展開していくとお話ししましたが、その後じっくり山岸さんと話すうちに「それだけではないな」と気付いたんです。

山岸:Medifellowという会社は、様々な方向に成長可能性を持っているからこそ、難しい部分があったのではないかと思います。池田さんに話を聞いてみると、組織としてどのベクトルに向かっていくべきか、メンバーと話し合う機会がここ最近少なかったとのこと。そこで「経営合宿」を提案しました。いつもと違う環境でアイデアソンを実施することで、組織として新たなフェーズへと入っていけるのではないかと考えたんです。

池田:実際にアイデアを出し合ってみると、メンバーからいろいろな案が出てきました。それらの案を一つずつ、山岸さんにも相談しながら、具体的に検討していきました。マーケットサイズ、成長余地、いかにスピーディーに展開できるかなど、いくつもの視点でデータを集め、リサーチを重ね、どの道を選ぶべきかを考えていったんです。

山岸:その結果、海外在留邦人向けの取り組みをより深めて、ブラッシュアップする方向に決まったんですよね。

池田:山岸さんから地に足ついたアドバイスをいただいたおかげで、取り組むべきところに焦点を絞ることができました。そして、ここまでの検討プロセスがあったからこそ、海外在留邦人向け事業における営業戦略もより鮮明になったんです。駐在員を多く抱える商社にアプローチしてみよう、どの部署にどういった経路でアプローチするのが良いのだろう、海外の各都市にある「日本人会」を運営している方に働きかけてみようか……など、アクションプランの解像度がどんどん上がっていきました。

── 今回メンタリングを受ける中で、一番助けられたことは何でしたか?

池田:私たちのチームは基本的に専門医で構成されていることもあり、社内で話をしていると医療の専門家目線でのアイデアに凝り固まってしまいがちです。今回山岸さんから、医療業界の外から見たフラットなアドバイスをいただいたことで、非常にたくさんの気付きがありました。例えば、33の診療科で高いレベルの専門医を揃えていることが私たちの強みなのですが、「33の診療科が揃うこと」の価値の説明が足りていなかったと気付きました。

山岸:確か、「33診療科ってどれぐらいすごいことなの?」「例えば、日本で一番大きい病院と比べてどうなの?」と私が質問したんですよね。

池田:そのやりとりがきっかけで、「大学病院並みの診療体制」「オンライン診療プラットフォーマーでは世界唯一」など、事業の価値が伝わりやすい表現を考案できました。この件以外にも、山岸さんとの定期的な面談はアクションに向かうための良いプレッシャーになり、各所でこういった進捗が生まれて、その積み重ねで事業全体がブラッシュアップできたという印象です。

刺激を受けて自ら行動することで、事業に良い循環が生まれた

── メンターの山岸さんは、どのようなことを心がけて池田さんと接してきましたか?

山岸:「指示しない」「強要しない」「思ったことを素直に伝える」の3点を心がけました。事業を「自分ごと」と捉え、主体性をもって自律的に行動できる人でなければ、起業家としてやっていくのは難しい。何百人の起業家と話す中でそう気付いてから、これらの心がけを守るようにしています。そもそも、言われたことをそのまま受け入れて実行しても、必ずうまくいくとは限らないのがビジネスの世界です。他者からの言葉をどう咀嚼してどうアクションするかは起業家に委ねられており、かつ、そこで起業家の手腕が問われるのだと思います。投資家としても、自分で考えて、自律的に動ける人を応援したくなります。

池田:確かに山岸さんは、「こうしなさい」とは決して言わず、「こうするのも一つの手なんじゃないか」というアドバイスの仕方をされますね。

山岸:変化球を投げ込んでみることもあれば、まったくの第三者的な意見をぶつけてみることもありました。プログラムを通して何らかの完成形をつくるのではなく、普段のように事業に取り組んでもらう中で、私が振動を与えるといったイメージです。

池田:何もなかったらまっすぐ進んでいくであろう局面で、山岸さんから刺激をもらい、それを受けて考え、行動してみる。ミーティング中のメモをもとにアクションしてみて、その中で気付いたことを次のミーティングで話すと、次のアクションが見えてくるんです。対話とアクションを重ねる中で、事業課題が整理されていきました。

── 池田さんは、プログラム全体を通して成長できたと感じますか?

池田:考え方の幅は、確実に広がったと思います。戦略を立てるときも、よりクリアに思考を進められるようになりました。

山岸:ある時点から池田さんは、「この前の件でとある人と話してみたら、こういった情報をもらいました」と報告してくれることが多くなりました。また、「これについて話したいのですが」「こういうことを疑問に思っているのですが」と自らアジェンダを振ってくれることも増えました。これは池田さんが、常に起業家としてのアンテナを張れるようになったことの証ではないでしょうか。「今回の打ち合わせでは、こういう部分を気にかけておくべきだ」「こういう視点で相手の話を聞いておかなければいけない」といった視点を持てるようになったのだと思います。

池田:そうですね。パートナーと話しているときにも徐々に的確な質問ができるようになり、相手の発言がきちんと腑に落ちるようになったと思います。

── 事業のあり方も大きく変わったことと思います。

池田:「やらないこと」と「やること」の線引がクリアにできたのは、大きな成果です。やることを決めるよりも、やらないことを決めるのが難しいんですよね。とりあえずやることにしておけば、かっこよく見えますし……

山岸:ベンチャーはリソースが限られているので、なんでもかんでもやることはできない。「これはやらない」と決めることが、とても大事です。今回のプログラムを通じて、池田さんの事業にもメリハリがついてきましたね。五里霧中の状態から「こっちの方角に進む」とベクトルが定まり、優先度の濃淡もはっきりしました。強みのある部分によりフォーカスできるようになったと思います。

池田:ベンチャーは限りあるリソースを活かして何かをやろうとするのですが、実際には「やってみないとわからない」ような部分もある。拡散と収束のバランスが難しいと思います。その難しい部分をメンターと共に突き詰めることができ、ありがたかったです。

山岸:集中すべきポイントをどのように絞っていけば良いのか、そのためにはどのように考えていけば良いのかが伝わっていたら嬉しいですね。

池田:そういえば、事業の方向性を定めて以来、いろいろな方面からお声がかかるようになったんです。たまたまなのかもしれませんが、メンタリングによる自分自身の変化が影響しているようにも思います。先ほど話題に出たように、アンテナを張れるようになったからかもしれません。

山岸:私から見ても、良い循環が回り始めたように感じます。物事を肯定的に捉えてチャンスとして活かす力を獲得したのかもしれませんね。

コミュニティで見聞を広めながら、より良い世界の実現を目指す

── 池田さんにとって今回のプログラムは、参加前の期待通りの内容でしたか?

池田:期待していた以上にがっつりとメンタリングを受けられて良かったです。プログラムによっては1人のメンターに対してメンティーが複数人いることもありますが、KOILではプログラムの全期間を通して一対一でメンターと話せました。そのおかげで事業の方向性が定まり、資金調達の目標達成も見えてきました。

── 次回のプログラムに期待することはありますか?

池田:参加する起業家の人数が増えて、より多彩な方々と交流できたらより理想的だなと思います。実は私はKOILパークのすぐ近くに住んでおり、実家も茨城で、柏の葉エリアには縁があると感じているんです。今後のプログラムでもぜひ交流会などに参加して、スタートアップコミュニティに積極的に関わり、見聞を広めていきたいと思います。

山岸:次世代の起業家のためにも、池田さんが先輩経営者として関われるようなコミュニティが形成されると良いですね。先行者である池田さんが経験を語れば、それは後輩たちにとってすばらしい資産になります。実際に起業と経営を実践してきた彼の言葉が、多くの人に勇気を与え、背中を押すでしょう。これは、自分のような投資家にはできないことです。

池田:自分には、おじいちゃんになっても起業家でありたいという夢があるんです。人工呼吸器を付けながらでも、決裁をしたり新規事業を立ち上げたりしたい(笑)多くの仲間と共に、ずっとがんばり続けたいです。

── 最後に、今後の事業の展望を教えてください。

池田:まずは海外在留邦人へのサービスをより良いものへとブラッシュアップして、「世界中どこにいっても大丈夫」と感じていただける環境を整備します。その目標が達成されたあとになるとは思いますが、いずれ日本人以外の方々にも、安心できる医療環境を提供したいと考えています。AIやWeb3.0などのトレンドワードもありますが、時代を超えて求められる普遍的な価値を見失わないようにしようと思っています。本当に人々の役に立つ医療の本質を忘れず、ぬくもりのあるサービスをつくっていきたい。これからもアクションを積み重ねて、より良い社会を実現したいですね。


KOIL STARTUP PROGRAMについて

「KOIL STARTUP PROGRAM」は、柏の葉スマートシティにあるイノベーション拠点KOILにおいて、2022年より始動したスタートアップ支援プログラムです。 新産業創造を牽引するスタートアップの成長支援を目的に、KOILの無料利用、ビジネスプラン作成セミナーや個別メンタリングをパッケージ化したプログラムを用意しています。本プログラムを立ち上げることで、柏の葉スマートシティにおけるスタートアップの集積と事業成長、さらにはスタートアップ・コミュニティの醸成を促進し、柏の葉スマートシティにおける新産業創造をより一層加速していきます。


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