【スタートアップ&メンター対談】 2024.2.19

不安が払拭され自信がついた。これからの景色を鮮明にしたプログラム

株式会社MamaWell 代表取締役 関まりか 氏
TEPメンター 山岸朝典 氏

参加企業   株式会社MamaWell
事業概要 妊娠・出産の専門家である助産師が、貸与したウェアラブルデバイスと自社開発したアプリのデータに基づき、オンライン上で母子の健康を伴走サポート(健康モニタリング・運動支援・定期面談)する事業を行っています。
プログラムで得た実績 プログラム参加後(または参加期間中)に得た実績

・20名以上のモニター獲得
・10件以上の新規営業開拓
・4名の新規採用及び社内体制の変革

柏の葉の新産業創造を牽引するスタートアップ支援「KOIL STARTUP PROGRAM 2023」では、約5か月間にわたってスタートアップの事業成長を後押ししてきました。

今回は、妊婦に対してパーソナル助産師伴走サービス“MamaWell”を提供する「株式会社MamaWell」代表取締役の関まりか氏に、TEPメンター山岸朝典氏によるメンタリングの感想、全プログラムを終えて感じること、そして今後の展望を伺いました。

株式会社MamaWell 代表取締役 関まりか 氏

助産師として病院で勤務後、千葉大学大学院に進学し「妊婦の身体活動」をテーマに研究を進め、自身の研究・助産師・妊娠経験を起業シーズに株式会社MamaWellを創業し、千葉・筑波大学発ベンチャーとなる。「女性の生涯における健康をエビデンスに基づいてサポートする」をミッションに掲げ事業を推進している。

TEPメンター 山岸朝典 氏

池森ベンチャーサポート合同会社(ivs) 事業統括責任者/公認会計士
監査法人、事業会社の経営企画などを経て、Fancl創業者である池森賢二氏が2018年11月に立ち上げたivsに創業時から参画。“社会起業家に光をあてたい”という同氏の思いを実装すべくハンズオンで起業家支援に取り組んでいる。

目の前のことに精一杯にならない体制づくり

── メンタリング開始時、お互いの第一印象はいかがでしたか?

株式会社MamaWell 代表取締役 関まりか(以下「関」):最初挨拶をしたとき、反応がすごくあっさりしていて、最初は正直不安になりました(笑)。でもそのあと、いざ1on1をすると初対面とは思えないほど親身に接してくださって、一気に不安が消えていったことが印象に残っています。

TEPメンター 山岸朝典(以下「山岸」):そっか、最初は冷たいイメージだったのか(笑)。僕から見た関さんの第一印象は、「事業に真摯に取り組まれてきた人」。最初にピッチを聞いたときに「出来上がってるな」と思いました。

あと、すごく真面目で正義感が強そうな人だなと。それを裏返して言えば突き抜けていないところがある印象だったので、これから自分なりの強みをいかに見出して、熱い想いをどうやって伝えていくかが重要だと感じました。

── 5ヶ月にわたるメンタリング期間で、どのような課題に取り組んできましたか?

関:最初に言われたのは、「目の前のことでいっぱいいっぱいにならず、常に全体を見て動くこと」です。この5か月間はそれを意識して過ごしました。最初は本当に目の前の小さなことに追われすぎていて……そして全体も見えていないので、次の大きな一歩も踏み出せずにいたんです。

そこで山岸さんに相談しながら、各部門のマネージャーに権限委譲して、自分にしかできない仕事にできるだけフォーカスできるように改善していきました。ただ、自分でもまだまだだと感じています。山岸さんからも「まだまだ動けていないし遅い」と何度も言われたので、これからも日々精進ですね。

山岸:関さんの性格上「自分が解決しなきゃいけない」という責任感が強く、どうしても抱え込んでしまうところがあるなと感じました。そこで合宿のような、MamaWellのなかで方針を共有する場を持つことを提案したんです。

関さんご自身も子育てをされているので、24時間365日戦うのは難しい状態です。ならば、それに合った戦い方、つまりチームとして戦える体制づくりをしていかないといけません。そのためには、メンバーに方向性を共有して全員が共通認識を持った上で、自律的にメンバーが動ける体制を作ることが必要でした。

関:その体制は少しずつ出来てきたと感じてます。ただ、どこまで権限委譲していいものか悩むこともありました。些細なことがトラブルになる可能性もあるので、どうしても迷うことが多かったです。

ここでも山岸さんにアドバイスをもらいながら進めていきました。現在は、プロジェクトごとにタスクを細分化して、期限を決めて動いていますし、週次で方向性を決定するための経営会議もしています。これができるようになったのも山岸さんのおかげだと感謝でいっぱいです。

山岸:どこまで権限を渡して、どこから上に報告させるのかという仕組みの線引きをするのは難しいですよね。ただ、自社にとって致命的な事故につながらない領域は積極的に任せて、注意が必要な領域は報告の仕組みを作っていくことが大切です。

最初は些細なことでもマネージャーに上げてもらって、少しずつ報告する事柄を減らしていくことで作っていくのがよいでしょう。もちろん一朝一夕でできるものではないので、改善を続けながらやっていけるといいですね。

景色の解像度が高まり、自信を持って動けるようになった

── 今回メンタリングを受ける中で、一番助けられたことは何でしたか?

関:このプログラムに参加するまでは、「本当に進めて大丈夫なのかな」と思うことが多かったんです。しかもどの道でどの山に登るのかも定まっていなくて、ただただ不安を抱えていました。それが今は登るべき山も、向かうべき方向性も決まりつつあるので、今までよりは自信を持って動けるようになってきたと感じています。

山岸:それはおそらく、景色の解像度が高くなったということだと思います。もともとサービスの概要は固まっていてやりたいことは明確にあったけれど、足元からそこに至るまでの道のりが五里霧中だったのかなと。でもたとえば、このプログラム中に、toBだとうまくいかなかったけど、toCだと足元の利用者数を増やせて、ノウハウも溜まることが見えてきました。こうして徐々に、足元からの景色がくっきりしてきたのではないでしょうか。

関:走りながら進めるのが一般的なスタートアップの進め方ですが、以前の私はある程度地盤を固めてからでないと進めなかったですしね。

山岸:だからずっと止まってて、でも進み出したら全力疾走して、しばらくしたらまた止まって考えて全力疾走って感じで。

関:そうでしたね。それじゃダメだと気付かせてくれて、具体的な動き方を教えていただきながら実践まで行うことができました。

── メンターの山岸さんは、どのようなことを心がけて関さんと接してきましたか?

山岸:関さんは人の意見をよく聞くタイプで、その意見を自分なりに消化しようとするマインドも持っている方です。その意味ではメンターとしてはやりやすかったです。ただその反面、人の意見を正面から受け止めるので「これは私っぽくないから」とやり過ごせないところもありました。

そのため、いつも「いろんな意見もアイデアも出すけど、最後に選ぶのは関さんだから」としつこいくらいに伝えていました。いろんな人の意見を入れると結局玉虫色の特徴がないものになってしまうので、それは避けたかったんです。起業家それぞれ個性があって、その人の言葉が響くVCもいれば響かないVCもいますし、仲間になってくれる人もなってくれない人もいます。でも特徴がないと誰にも響かなくなってしまうので、関さんに判断してもらうことはとにかく大事にしていました。

また、今回のプログラムで僕が理想としていたのは、関さんのコピーを作ることではなく、関さん1人だと思いつかないようなアイデアが従業員から出てきて「それいいね」と物事が進んでいく状態を作ることでした。方針と目指すべきゴールが共有できているなかで、関さんはAのルートで行こうと思っていたところ、メンバーから「Bもありますよね」って意見が出てくるイメージです。会社としての方向性が共有されていて、それに向かって従業員が主体的に発想していく。そしてもし方向性が違っていたら、なるべく早くみんなで軌道修正し合えるのが理想だなと考えています。

不安と向き合いながら進む力を得た

── 関さんは、プログラム全体を通して成長できたと感じますか?

関:不安との付き合い方を学べました。新しいことが次々起こるので、常に見えない不安があったんです。この話を山岸さんにすると「それってわからないことが多すぎるからで、インプットが足りてないのではないか」と助言をいただきました。

そこではじめて、自分の不安の理由に気づけたんです。それからは、次に進む前に自分でできる限り調べて、何が起きるか想定できる範囲を広げることで、自分の不安をできるだけ減らして次に進むことができるようになりました。
それから、山岸さんは毎回「決めるのはあなただよ」と伝えて、こちらに決断を委ねてくれたので、自分が決めていいんだなと思えるようになりました。そのスタンスには非常に救われたなと思っています。

関:決めてもいいんだというより決めなきゃいけないんですよね。今回のプログラムで、少し自分に自信がついたのかなと思いますが、いかがですか。

山岸:それはあると思います。このプログラム内で開催されていたイベントでも、それも感じました。今までは内向的な性格であることも手伝って、そうしたイベントの場で知らない人に挨拶しに行くことを躊躇する気持ちがあったんです。でもプログラムを受け始めてから自信を持って挨拶に行けるようになって、そのときも楽しい時間を過ごせました。

── 今回のプログラムに参加してみていかがでしたか?また、次回のプログラムに何か期待することはありますか?

関:このプログラムに参加してなかったら今どうなっていたんだろうなと思うくらい、組織面でも事業面でも多くの変化がありました。この5か月でフライヤーの内容もすごく変わりましたし、参加していなかったらと思うとゾッとするほど、多くのものを得ました。さらに、柏の葉に住む街の人たちとのイベントができたら、PRの機会となってさらにうれしかったかもしれません。

山岸:僕としては、関さん以外のメンバーが参加できる機会があってもよかったかもなと感じています。メンターに言われたことをメンバーにフィードバックしようと思っても、どうしても完全にはできない部分も出てくるので、関さんが何を発表して周りからどんなアドバイスをもらっているのかを主要メンバーが聞く機会があったら、また面白い変化が起きたかもしれませんね。

── 最後に、今後の事業の展望を教えてください。

関:妊娠・出産はキャリアの中断にならないし、安心して臨めることだと若い方たちに伝えていきたいです。妊娠経験のない若い方が妊娠経験のある先輩から聞くのは出産は大変というマイナスイメージの大きい話が多いのが現状です。それが妊娠・出産の抵抗感につながっていると思うので、その抵抗感を無くして、妊娠・出産に安心して臨める世界観をまず作りたいですね。

なかでも、今は働く妊婦さんにターゲットを絞っています。働く妊婦さんは、「キャリアを中断して出産する」という認識を持っているためか、妊娠中にできるだけ頑張ろうとすることが多いんです。その結果、切迫早産を起こしたりトラブルを抱えてしまったりすることもよくあります。結果的に妊婦さんの自己実現にもつながっていないので、ここをまずサポートしたいと考えています。

そのためにも、今後も柏の葉のフィールドを使って多くの妊婦さんに知ってもらう機会を作っていきたいです。そして地盤をしっかり固めた上で、千葉県内、都内、関東圏と少しずつ広めていきたいです。

山岸:あと、先ほども話していたんですけど、KPIなどの数字的な管理を強化することも必要ですよね。

関:そうですね。まだまだ数字で動けていないので、そこも改善しつつMamaWellが目指す「すべての妊婦さんが安心・安全に妊娠や出産をできる世界」の実現に向かっていきたいです。


KOIL STARTUP PROGRAMについて

「KOIL STARTUP PROGRAM」は、柏の葉スマートシティにあるイノベーション拠点KOILにおいて、2022年より始動したスタートアップ支援プログラムです。 新産業創造を牽引するスタートアップの成長支援を目的に、KOILの無料利用、ビジネスプラン作成セミナーや個別メンタリングをパッケージ化したプログラムを用意しています。本プログラムを立ち上げることで、柏の葉スマートシティにおけるスタートアップの集積と事業成長、さらにはスタートアップ・コミュニティの醸成を促進し、柏の葉スマートシティにおける新産業創造をより一層加速していきます。


この企業の他の記事

他企業の関連記事

インタビュー/コラム 一覧 へ トップページへ
PAGE TOP