【スタートアップインタビュー】 2023.9.13

新たな視座から事業を見つめ、その先の道程を描く

株式会社エドギフト 代表取締役 越川 光 氏

柏の葉の新産業創造を牽引するスタートアップ支援「KOIL STARTUP PROGRAM 2023」では、4社のスタートアップを迎え入れ、各社の事業成長をハンズオンで後押ししています。

今回は、夢中に遊びながら指先から頭までフル活用する「組み立ておもちゃテグミー」、ものづくりやアントレプレナーシップを学ぶ教育プログラムなど、子どもに関するサービスを幅広く手掛ける「株式会社エドギフト」代表取締役の越川光氏に、TEPビジネスプラン作成セミナー(以下「セミナー」)の感想や1か月間メンタリングを受けての印象、その後のプログラム期間の意気込みを伺いました。

思考のレイヤーを上げると、新たな文脈が見えてきた

―― セミナーを受ける前は、事業の構想にどのような課題があると感じていましたか?

学生団体のレベルからスタートした私たちにとって、ビジネス経験を持った人材の欠如が最も大きな課題でした。

エドギフトの事業は、私が大学生のときに始めた活動を少しずつ拡大してきたものです。社内メンバーに十分な社会経験がない中、理念ドリブンで走ってきましたが、活動規模が大きくなるにつれて「学生視点」の限界を感じるようになりました。今のやり方が間違っているとまでは思わないものの、「このまま進むと頭打ちになるんじゃないか」という危機感があったんです。

事業の内容だけでなく、会社組織の運営においても「大人視点」の必要性を強く感じる場面がありました。社会経験の少なさが意思決定を困難にしてしまうんです。給与や副業可否などのルールを決める際にも、「前にいた会社はこんなルールだった」という経験の蓄積がないゆえに、「自分はこれが大事だと思う」など主観ベースの議論に終始しがちでした。

限られたリソースを事業に集中させるためにも、先輩経営者や社会経験豊富な方々にもっと深く関わり、ノウハウや考え方を吸収しなければいけないと感じていました。

―― セミナーを受けてみて、浮き彫りになった課題はありましたか?

現在の主軸商品である「組み立ておもちゃテグミー」をいかに訴求して売っていくか、その戦略を深く検討する必要性を実感しました。

玩具は一般的に「娯楽品」に位置づけられますが、テグミーは「教育」や「コミュニケーション」など、さまざまな文脈に置くことが可能なプロダクトです。売り方に複数の選択肢があるからこそ、どうブランディングしてどのように想いを伝えていくのか、メンターに問われては再構築を繰り返す日々でした。

まだ結論は出せていないのですが、問いに答える中で学ぶべき部分が明確になってきました。読まなければいけない本もどんどん増えていて、わくわくします。

―― セミナー期間の中で一番印象的だったことを教えてください。

セミナー期間中の最終メンタリングで、事業の文脈を大きく転換したことです。これまで「コミュニケーション」を軸に事業を進めてきたのですが、メンタリングを受ける中で、コミュニケーションの文脈だとプロダクトの必要性を論理的に伝えられないことが明らかになりました。

メンターから指摘された論理の飛躍をいかに埋めるか一日中考えた結果、事業の文脈を「療育」や「発達支援」へと転換することに決めました。夜中まで資料と向き合って考えた経験も含め、強く印象に残っています。

―― セミナーを受けて、どのようなことに一番の学びや成長を実感しましたか?

担当メンターの方との出会いが大きな成長につながったと思います。まさに参加前に期待していたとおりの方で、常に数段上のレイヤーで物事を見てくださいました。介護・医療系器具の開発経験をお持ちなので、プロダクト開発分野の先輩でもあります。

そんな担当メンターとのメンタリングを通じて、自社製品「テグミー」に自信を持てるようになりました。もちろん自分たちは良いプロダクトだと思って開発しているのですが、第三者にその良さがきちんと伝わるものなのか、あまり実感を得られていなくて。担当メンターに「これは良いものだ、自分も使ってみたい」と言っていただけたことで、プロダクトの良さを改めて感じられました。

この感覚がベースにあったからこそ、市場の検討やブランディング方針、コミュニケーション戦略の策定にもスムーズに取り掛かれたのかもしれません。事業の強みが明確になったことで、「これは根幹、これは枝葉」といった仕分けも進めることができました。

多彩なメンター陣との対話の中で、10年先の事業を見据える

―― 1か月間どのようなメンタリングを受けてきましたか?

担当メンターを中心に他のメンターの方々にも入っていただき、1週間に1回、思考ベースの壁打ちを繰り返しました。問いと答えを繰り返して理念の部分を掘り下げたあと、出てきたイメージを資料に落とし込みました。

終始ほがらかな雰囲気の中で、建設的な対話ができたと思います。その時々の悩みもメンタリングの中で相談し、客観的な立場から冷静なご意見をいただくことができました。

―― メンターの方々の印象はいかがですか?

「いろんな方がいる」というのが第一印象でした。KSPならではだと思ったのは、士業の方が多いことです。こういったプログラムで、会計士、弁理士、中小企業診断士、弁護士などさまざまな士業の先生が揃っているのは珍しいのではないでしょうか。

また、大手コンサルティング会社でスタートアップを支援されている方も多いですね。プロダクト開発ではいわゆる「起業家思考」とは別の視座も必要だと思っているので、さまざまな経歴のメンターが揃うKSPは自社に合っていると感じています。M&A、売却や譲渡などの将来像を考えてくださるメンターも多く、それも一つの良さだと思います。

担当メンターとなってくださった方からは、事業へのアドバイスをたくさんいただいただけでなく、コミュニケーションの取り方も勉強させていただきました。担当メンターの姿を見ていると、「これがコミュニケーションか」と気づかされるんです。

克服すべき部分があれば的確に「それはダメだ」と指摘した上で、「良いアイデアを持っているのだから一緒に磨いていこう」と、誰も傷つけることなくみんなの目指す方向へ議論を導いていく、そのバランスから学ぶことが非常に多かったですね。

―― 今後約4か月間のプログラムを通して、どのような姿になっていたいですか?

プロダクトやイベントプログラムの開発といった目の前の課題を乗り越えていくのはもちろんですが、自社の事業をもっと幅広く捉え、長期的な発展をプランニングしたいと思っています。今の取り組みの延長線上でやるとか、今の取り組みを捨てて新しいものをやるとかではなく、その先の10年、20年先を見据えて構想を練りたいです。

今は「見えない障害を持つ子ども」に玩具でアプローチしていますが、一人ひとりの才能や価値が社会に届いていないケースはほかの領域にもたくさんあります。例えば近年では子どもへの発達支援環境が整ってきましたが、支援を受けた子どもたちが成長した先の選択肢はまだまだ多くありません。どんな人も自分の将来に向かってチャレンジできる社会をつくるため、自分たちはどういった課題解決が可能なのか、今後プログラムを通して考えていきたいと思っています。


PROFILE

株式会社エドギフト
代表取締役 越川 光 氏

株式会社エドギフト代表取締役。名古屋大学大学院経済学研究科修士1年。大学4年次に組み立ておもちゃ「テグミー」を開発。専攻は計量経済学で、親子の世代間所得弾力性のメカニズムについて学んでいる。これまでに3歳から高校生までの幅広い世代への指導経験がある。


KOIL STARTUP PROGRAMについて

「KOIL STARTUP PROGRAM」は、柏の葉スマートシティにあるイノベーション拠点KOILにおいて、2022年より始動したスタートアップ支援プログラムです。 新産業創造を牽引するスタートアップの成長支援を目的に、KOILの無料利用、ビジネスプラン作成セミナーや個別メンタリングをパッケージ化したプログラムを用意しています。本プログラムを立ち上げることで、柏の葉スマートシティにおけるスタートアップの集積と事業成長、さらにはスタートアップ・コミュニティの醸成を促進し、柏の葉スマートシティにおける新産業創造をより一層加速していきます。


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