思考の解像度を上げ、ぶれない判断軸を手に入れる
ホシュー株式会社 取締役 高木 一郎 氏
柏の葉の新産業創造を牽引するスタートアップ支援「KOIL STARTUP PROGRAM 2023」では、4社のスタートアップを迎え入れ、各社の事業成長をハンズオンで後押ししています。
今回は、情報共有・チーム間連携に役立つアプリの開発を通じてフィールドエンジニアの業務負荷軽減に貢献する「ホシュー株式会社」取締役の高木一郎氏に、TEPビジネスプラン作成セミナー(以下「セミナー」)の感想や1か月間メンタリングを受けての印象、その後のプログラム期間の意気込みを伺いました。
言語化で事業の解像度が上がり、開発スピードも向上
―― セミナーを受ける前は、事業の構想にどのような課題があると感じていましたか?
サービスの開発において狙うニーズは決まっていたのですが、具体的なプランニングにおいて軸がゆらぐところがありました。「コモディティ化を避けるために新しい機能を追加するべきなのか、そうでないのか」「機能を追加するとすれば、その最適なタイミングはいつなのか」など、今後の方針に関して決めきれていない部分があり、社内での議論に時間を費やしていました。
この課題を解決するためには、事業として目指すところを固める必要があります。ミクロの深掘りは一人だけでも可能ですが、事業をマクロで捉えて「本当にこの方向に進んで良いのか」を考えるには、誰かとの対話が重要です。そこで、メンターとじっくり壁打ちできるKSPのプログラムに魅力を感じ、応募しました。
―― セミナーを受けてみて、浮き彫りになった課題はありましたか?
競合分析や営業の仕組みづくりなど、掘り下げが甘かった部分が可視化されました。これまでもなんとなく情報収集はしていたのですが、実際にマトリクスに落とし込み、メンターからの問いかけに答える中で、競合との差異や攻めるべきフィールドを改めて鮮明に考えられるようになったと思います。
―― セミナー期間の中で一番印象的だったことを教えてください。
あるメンターの方のMVP(Minimum Viable Product)のお話が印象に残っています。MVPの意味をどう捉えるべきかこれまで悩んでいたのですが、MVPは定義の仕方によって幻想のようなものにもなりうるというお話を聞いて、概念にばかりとらわれることなく、お客様に価値を提供してからどんどんサービスを磨いていくことが重要だと気づきました。
また、普段は周囲に起業している人がいない環境にいるので、KSPのプログラムを通じて経営者視点の方とコミュニケーションが取れたのも良かったです。初日の「お風呂メンタリング」をはじめ、随所でざっくばらんに話ができて、事業に取り組むモチベーションが上がりました。
―― セミナーを受けて、どのようなことに一番の学びや成長を実感しましたか?
ぼんやりと感じていたことを資料に落とす中で、思考の解像度が上がりました。これまで雰囲気で自社メンバーに伝えていたことも「これに取り組まないと勝てないよね」と明確に言語化できるようになりました。その結果社内コミュニケーションがスムーズになり、開発やデザインのスピードが上がったと感じています。
また自分の前職はスタートアップだったため、周りの方々から経験をもとにしたアドバイスを受けていたのですが、今回KSPに参加することで、それらのアドバイスの背後にあるロジックを深く理解することができました。
対話を通してロジックを埋め、伝える言葉も手に入れる
―― 1か月間どのようなメンタリングを受けてきましたか?
セミナーとリンクする形で事業計画のブラッシュアップを繰り返しました。メンターから「これどういう意味?」「ここがわからなかった」と何度も指摘を受けて、自分たちの事業を広く説明する難しさを実感しました。これまでは業界外の方に向けて事業を発表する場がなかったため、この課題に気づくこともありませんでした。
サービスのターゲット層やそれに近い領域の方には「こういう場面がありますよね、だからこういうサービスがあると楽になりますよね」と説明するだけでよかったのですが、全く違う業界の方に説明するには不十分で、根本的に言葉を変える必要があるとわかりました。汎用的な表現の重要性を感じましたね。
―― ここまでメンタリングを受けてみて、印象はいかがですか?
主に二人のメンターからメンタリングを受けましたが、お二人とも冷静に私たちの状況を分析してくださいました。特に、今まで自分たちで明確に言語化できていなかった部分を「ここがわかりづらい」と具体的に指摘していただき、とても助かりました。空洞だった部分がしっかりとロジックで補完され、判断の軸がぶれなくなったと思います。
メンタリングを通して、やる・やらないの仕分けもできました。メンターが「これやらないの?」とたくさんのアイデアをくださったことで、「やることリスト」だけでなく「やらないことリスト」も充実しました。「なんでやらないんだっけ?」と都度考えることで、理想とするサービスのあり方が明確になったと感じています。
―― 今後約4か月間のプログラムを通して、どのような姿になっていたいですか?
ビジネスプランはある程度言語化できてきたので、今後は伝わりやすさとの戦いだと思っています。
プロダクトに関しては、現在ヒアリングの結果を反映して改善を進めているところです。来期サービスローンチに向けて今年の後半からPoCを通じてお声がけいただいたお客様に提供したいと考えています。代理店向けの営業資料制作フェーズも近づいてきましたし、今後は収支計画も詰めていきたいところです。
柏でもサービスを使っていただけそうなところがあれば、ぜひご紹介いただきたいですね。SaaSはどうしても競合と横並びになりやすく、差別化が難しい領域です。導入実績を発信することでまた実績が集まるという循環を生むためにも、柏とのつながりを大切にして、事例を集めていきたいと思います。
PROFILE
ホシュー株式会社
取締役 高木 一郎 氏
長年、物流システムの設計・開発に従事。その後、九州のスタートアップで子会社設立などを経てロボットを活用した物流自動化のスタートアップに転職し、商品企画・システム設計に従事。その中で現場が見えないことによる移動時間やミスコミュニケーションによる時間消費が課題と感じ、2022年12月にホシュー株式会社を設立。
KOIL STARTUP PROGRAMについて
「KOIL STARTUP PROGRAM」は、柏の葉スマートシティにあるイノベーション拠点KOILにおいて、2022年より始動したスタートアップ支援プログラムです。 新産業創造を牽引するスタートアップの成長支援を目的に、KOILの無料利用、ビジネスプラン作成セミナーや個別メンタリングをパッケージ化したプログラムを用意しています。本プログラムを立ち上げることで、柏の葉スマートシティにおけるスタートアップの集積と事業成長、さらにはスタートアップ・コミュニティの醸成を促進し、柏の葉スマートシティにおける新産業創造をより一層加速していきます。
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